スパダリ御曹司のお相手が、私でいいのでしょうか?~一晩だけのはずが溺愛が終わりません~
(ジャージとか着たことあるのかな?)
瀧澤がジャージを着ていたら、よくあるメジャースポーツブランドの既製品でも、どこの高級ブランドの特注品かと思われそうだ。
(いや、待てよ。瀧澤家の御曹司なら本当に高級ブランドの特注品が買えてしまう……?)
光莉が想像を膨らませているうちに、店の奥にあるテニス用品コーナーへと無事到着する。
「これがラケット?私が知っているテニスラケットとは少し異なるようだが……」
壁面にはラケットのフレームが天井近くまでズラリと展示されていた。カーボン、アルミニウム、チタンと素材は様々だ。
瀧澤はガットの張られていない空っぽのフレームをまじまじと見つめていた。
「ああ。ガット――中央の網の部分ですね。ガットはフレームを選んだ後に専用の機械で張ってもらうんですよ。そうしないと、店頭に並んでいる間にガットがたわんでしまうんです。もちろん、既に張ってある状態の物も売ってますよ」
光莉はラケットを指し示しながら瀧澤に説明した。光莉には当然のことでも、瀧澤にしてみれば見るのも触るのも初めてのことだろう。