スパダリ御曹司のお相手が、私でいいのでしょうか?~一晩だけのはずが溺愛が終わりません~
「あの、今日はどちらで練習を?」
集合場所は聞いたが、具体的にどこで練習をするかは一切聞いていない。
光莉の記憶が正しければ、この辺りにテニスコートはないはず。住宅街ばかりで屋内テニスコートや大きな公園なども見当たらない。
瀧澤が車でやって来たということは、ここからかなり移動するということだろうか。
「私の友人の家だ」
「ご友人のお宅ですか?」
「ああ、事情を話したら快く貸してもらえることになった」
テニスコートがあるお宅ということは、郊外に向かうのかと思いきや、車は高級住宅街と謳われる丘を駆け上って行った。
窓の外の景色をぼうっと眺めていた光莉は、丁字路を右に曲がってから同じ色の塀ばかりが続くことに気が付き戦慄した。
(ここ、都心の一等地だよね?)
塀続きということは同じ家主のお宅ということだ。
やがて瀧澤の運転する車は立派な門構えのとある豪邸の前でゆっくりと止まった。インターフォン越しに名前を告げると、自動で門が開く。塀の外もすごかったが、門の内側も十分凄い。
(信じられない……!)
まずは門から屋敷までの距離。パジャマで新聞をとりに行けるような距離ではない。往復するだけで疲れそうなポーチはランニングにちょうど良さそう。
車で乗り入れられるほど敷地が広いことに驚いている間に、車が車庫に入っていく。
後部座席から下ろしたテニスバッグを肩に担ぎ、敷地の広さに負けない大きな屋敷へ向かうと、玄関の前には男性がひとり立っていた。