スパダリ御曹司のお相手が、私でいいのでしょうか?~一晩だけのはずが溺愛が終わりません~
「タキ、よく来たな」
「悪いな、明音」
「いいよ。お前が俺に頼みごとをするなんて珍しいもんな」
気の置けない仲なのか、軽めの挨拶を済ませると、瀧澤は光莉に向き直った。
「私の友人の槙島明音だ」
「初めまして」
「初めまして!出水光莉です」
瀧澤の友人を紹介され、ぺこりと頭を下げる。
類は友を呼ぶのか、この豪邸の持ち主の槙島もスラリと背が高く、瀧澤と見劣りしない華やかな印象の整った面差しだった。
「ここは槙島家が所有する別宅のひとつだ。事情を話したら別宅ごと快く貸してくれた」
「は、はあ……」
目の前の現実が受け入れられず、なんともいえない気の抜けた返事になってしまった。
(別宅?貸す?)
別宅ということはこんな豪邸をいくつも持っているということ?
テニスコートを別宅ごと貸し借りって、さすがお金持ちは話の次元が違う。
「所有って言っても俺じゃなく、弟の灯至の持ち物だけどね。俺、不肖の長男だから」
ニパッと歯を出して笑う槙島に光莉は何も言えなくなった。槙島の渾身のジョークを笑っていいのか、いけないのか。
助けを求めるように瀧澤を仰ぎ見ると、もとより無反応だった。
そんな瀧澤をさして気にすることなく槙島は別宅の中を案内してくれた。