スパダリ御曹司のお相手が、私でいいのでしょうか?~一晩だけのはずが溺愛が終わりません~
瀧澤と光莉が案内されたのは、大きな玄関を抜け、螺旋階段を上った二階の端の部屋だった。
扉が開け放たれ「どうぞ」と中に入るように促される。
「うわあ……!」
着替えだけに使うのはもったいない、クラシカルホテルの一室のような素敵な部屋だった。木製の窓枠の大きな出窓を開くと英国風の庭園から薔薇の芳しい匂いがした。天蓋付きのベッドには、マリーゴールドが刺繍されたカバーがかけられている。
大正モダンという謳い文句がぴったりのゲストルームだった。
屋敷そのものは相当な築年数が経っているはずだが、ゲストルームは改装済みなのか文明の利器であるエアコンも完備されている。
「着替えはこのゲストルームを使ってくれる?シャワーもあるし、一通り必要なものも揃ってるから。しばらく通うなら好きなものを持ち込んでもいいよ。タキは隣の部屋な」
「え!?こんな素敵なゲストルームを占領していいんですか!?」
「大丈夫、来年の春までこの家、空き家だから」
……こんな贅沢な空き家があってたまるか。
「テニスコートの方も管理は行き届いているからそっちはすぐ使えるよ。っていうか、タキの家にもテニスコートなかったっけ?」
「あることにはあったんだが、随分前に潰してガレージを建てた。誰も使う人がいなかったからな」
「うわ、タイミング悪いなあー」
光莉は二人の話を聞きながら、心中穏やかではいられなかった。