スパダリ御曹司のお相手が、私でいいのでしょうか?~一晩だけのはずが溺愛が終わりません~
(一家に一面テニスコートって標準装備なの……?)
二人の会話が異次元過ぎて、自分の常識を疑ってしまいそうになる。
光莉は房総の片田舎出身だが、敷地の中にテニスコートがあるお宅なんて周囲に一軒もなかった。
忘れそうになってしまうが、ここは都内の一等地だ。瀧澤はもちろん、友人である槙島もとんでもないお坊ちゃまだ。
「まさかタキがテニスを習い始めるとは俺も思ってなかったな。練習頑張れよ。管理人にはしばらくタキが通いにくることは言ってあるから」
槙島は瀧澤を激励するように背中を軽く叩くと、妻子が待っているという自宅へと帰っていった。
槙島が帰ると、途端にゲストルームの中がシンと静かになる。
「随分と仲が良いんですね……?」
「明音とは同じ男子校の出身だ。昔から私のことをよく知っている」
笑顔を絶やさない槙島と、ほとんど表情が変わらない鉄仮面な瀧澤。かけ離れた印象の二人だが、親友と呼んでも差し支えない仲なのだろう。
「着替えたら早速始めよう」