スパダリ御曹司のお相手が、私でいいのでしょうか?~一晩だけのはずが溺愛が終わりません~
「うわあっ!立派なテニスコート!」
着替えを済ませ、瀧澤と共にテニスコートの傍までやって来た光莉は興奮を抑えきれず叫びだした。
フェンスで囲われたその中にはプロの大会でも使われるハードコートが一面設けられていた。ネットもちゃんと張ってあるし、弛みやほつれもない。とても個人宅とは思えない。好きに使っていいなんて贅沢極まりない。
二人はコート脇のベンチに荷物を置いた。すぐにラケットを取り出そうとする瀧澤を慌てて制する。
「始めはストレッチ!」
強い口調で注意すると、瀧澤がキョトンと目を丸くして光莉を見つめ返していた。
(しまった……!)
光莉はすぐに我に返り、自分の行動を後悔し始めた。相手は自分が働いている企業の専務だ。完全に叱りつける相手を間違えた!
「す、すみません!つい中学生に指導する時と同じ感じで……!」
「指導経験があるのか?」
「はい……。大学生の時にアルバイトで中学生にコーチを……」
「それは心強い。その調子で至らないところはどんどん指摘して欲しい」
瀧澤はラケットをバッグにしまうと、光莉に倣うようにストレッチを始めた。
瀧澤からの叱責を覚悟していた光莉は拍子抜けした。