スパダリ御曹司のお相手が、私でいいのでしょうか?~一晩だけのはずが溺愛が終わりません~

「ナイスー!」

 センスが良いのか、瀧澤は返球のコツを直ぐに覚えた。これは嬉しい誤算だった。返球がまずます安定してきたところで光莉もラケットを持ち、今度は二人でノーバウンドでボールを繋ぐ。野球でいうキャッチボールのようなものだ。

「まずは五十回を目指しましょう!」
「結構キツイな!」
「慣れるとあっという間ですよ!」

 これはまだ準備運動のうちだということは、あえて伏せておいた。
 やはり難易度が上がると、瀧澤の表情には厳しさが増した。惜しいところまでカウントは進むのだが、中々最後まで辿りつかない。ノルマの五十回を終えた頃には瀧澤は汗だくになっていた。初日にしてはまずまずの出来だ。
 ドリンク休憩を取り終えた後は、コートを広く使うことにした。
 ラケットをテイクバックした状態で待機してもらい、光莉が落としたボールを打ってもらう。

「あっ」

 光莉が気が付いた時にはもう遅かった。
 瀧澤の打ったボールは綺麗な放物線を描きながらフェンスを飛び越え、植木に直撃した。
 ……初球はフェンス越えの見事なホームランだった。
 二人ともしばらく目が点になっていたが、練習を一時中断しボールを探しに行くことにした。
 敷地内にボールが転がっていたせいで、万が一でも槙島家の誰かが怪我をしたらまずい。

「まさかこの歳で迷子のボールを探す羽目になるとはな……」
「あはは!私も自分が初心者だった時のことを思い出します~!」

 しみじみと今の状況を分析している瀧澤の言い草に、光莉は堪えきれず笑い出してしまった。
 しかし、ふと冷静さを取り戻した。

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