スパダリ御曹司のお相手が、私でいいのでしょうか?~一晩だけのはずが溺愛が終わりません~
(あれ?もしかして、これって笑っちゃだめなやつだった?)
ただでさえ特大ホームランをかまして恥ずかしい思いをしている瀧澤を笑ったりなんかしたらダメに決まっている。
「あ、すみません!笑ったりなんかして……」
「いや……。笑ってもらえた方がむしろ楽だ」
もしかして、最初の台詞は瀧澤なりの冗談のつもりだったのだろうか。
(瀧澤専務って、冷たい人ってわけじゃないんだよな……)
表情は普通の人より乏しいけれど、決して冷たい人ではない。むしろ逆?
「あ、ありましたよ!」
瀧澤が放ったボールは、地面に落ちることなく木の枝の上に引っかかっていた。
「えい!」
ラケットの先でちょんちょんと突くと、ボールは下に落ちてきた。ただし、なぜかふたつも。
「……分裂したのか?」
瀧澤が真顔で言うものだから、今度こそ光莉は腹を抱えて笑った。
落ちてきたボールのうち、ひとつは買ったばかりの新品。もうひとつは長い間風雨にさらされていたのか茶色く汚れていた。
「誰かがここに飛ばしてそのままになってたんですね」
「今度はどこかにやらないように気をつける」
「はい。お願いしますね!」
……これ以上笑ったら腹筋が死んでしまう。