スパダリ御曹司のお相手が、私でいいのでしょうか?~一晩だけのはずが溺愛が終わりません~

 安西会長の邸宅から帰宅する車中、光莉は瀧澤に頭を垂れた。

「本当にすみませんでした!でしゃばって勝手にベラベラと……!」
「いいや、むしろ助かった」

 助かったとは一体どういうことだろうか?
 瀧澤は「実は……」と、前置きをしてから苦しい胸の内を明かし始めた。

「安西会長には費用面の折り合いがつかないからと、新ホテルの件は一度断られている。なんとか再交渉の糸口が掴めればと、藁にもすがる思いでテニスを持ちかけたんだ」
「そうだったんですか……」

 瀧澤がそんな苦境に立たされているとは全く気が付かなかった。瀧澤は自身の窮状をひと言も光莉に告げていなかったのだった。
 
「どんな形にせよ、会長ご夫婦をTAKIZAWAのショールームにご招待できたのは僥倖だ。私がご夫妻に話したところでこうはいかない。君の手柄だ。ありがとう」
「どう……いたしまして?」

 謝ろうとしていたのに、なぜか褒められた。果たして素直に喜んでいいのだろうか?

「なんで疑問形なんだ?褒めているつもりなんだが……」
 
 瀧澤に褒められるなんて、今日はなんて記念日だろう。
 契約が決まったわけでもないのに、車中の空気は驚くほど軽かった。

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