スパダリ御曹司のお相手が、私でいいのでしょうか?~一晩だけのはずが溺愛が終わりません~

「こんにちは」
「安西様!本日はショールームまで足を運んで頂き、ありがとうございます!」

 濃紺のパンツスーツに身を包んだ光莉はショールームの入口で安西夫婦を出迎えると、深々とお辞儀をした。
 この日、会長の邸宅からほど近いTAKIZAWAのショールームには安西夫妻御一行がやって来た。

「本来ならショールームの担当者が案内を務めさせていただくのですが、今日は私が代わりにご案内させていただきます」
「あら、そうなの?」

 光莉は瀧澤の指名で安西夫婦の案内を仰せつかることになった。法人営業部の自分が、ショールームで接客なんて大丈夫だろうかと一抹の不安がよぎったが、瀧澤に「頼む」と懇願されては断れない。

「お待ちしておりました」
「瀧澤くん、君まで来てくれたのか。わざわざすまないね」
「いいえ、とんでもないです」

 瀧澤は一行に恭しく頭を下げた。
 何かあったら瀧澤からのフォローがあると思うと心強い。
 長らく法人営業部の所属だったので、『トルテ』シリーズについては予めいちから勉強し直したが、不安要素は尽きない。


「ほら、寧々(ねね)。ご挨拶しなさい」
「こんにちは……」

 安西夫妻のご令孫は、西洋人形のようなパッチリとした瞳とふわふわにカールした巻き毛が可愛い、レースのワンピースが似合う美少女だった。
 
「こんにちは!気になったものがあったらお姉ちゃんに教えてね」

 寧々は安西夫人の背中に隠れながら、こくんと小さく頷いた。内気な子なのかもしれない。
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