スパダリ御曹司のお相手が、私でいいのでしょうか?~一晩だけのはずが溺愛が終わりません~


 役員フロアの前にある受付で、瀧澤専務に呼び出されたと伝えると、すぐに執務室の前まで案内される。
 三回ノックし入室の許可を得ると、光莉は大きく息を吸い背筋を伸ばした。

「失礼します!」

 入室するとその場で一礼する。挨拶は円滑なコミュニケーションの第一歩だ。

「元気な挨拶だな」

 挨拶を褒められ顔を上げると、レザーチェアに腰掛けている件の専務と目が合う。整った面差しに思わず見惚れそうになった。
 後ろに流してワックスで固めただけの艶やかな黒髪、スッと伸びた鼻梁に、薄くて形のよい唇は、作り物のような造形美の中に品の良さを感じさせた。
 シワひとつないグレーのスーツと革靴に身を包んだ専務には、日射の角度のせいか後光がさしていた。

「仕事中に呼び出してすまない」
「いえ!大丈夫です!」
「座ってくれ」
「失礼します!」

 光莉は勧められるがままに、執務室のソファに腰掛けた。ふわっとした柔らかい座り心地に、少しだけ緊張がほぐれていく。

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