スパダリ御曹司のお相手が、私でいいのでしょうか?~一晩だけのはずが溺愛が終わりません~
……どうしてこの時、こんな発想に至ったのか今になってはわからない。
祝いの美酒で酔っていたのかもしれない。
恋人を作れという奈緒の助言に触発されたのかもしれない。
光莉とは正反対の女性と結婚した斗真への対抗心があったのかもしれない。
「何でも……いいんですよね?」
「ああ、遠慮なく言ってくれ」
光莉は両膝の上で、拳を握りしめた。
「瀧澤専務、私を抱いてもらえませんか……?」
「……は?」
聞き間違いではないかと、瀧澤は光莉を訝しみ食い入るように見つめた。
「冗談はよしてくれ。ふざけているのか?」
先ほどまで笑みをたたえていた瀧澤に嗜められ、光莉は顔面蒼白になった。
……魔がさしたとしか言いようがなかった。
物事を深く考えず突っ走ってしまう光莉の性格の悪いところが出てしまった。
一気に酔いが覚めていく。
「す、すみませんでした……!」
「なぜ泣く……」
顔を伏せた拍子に握った拳の上に、涙がポタポタと落ちていった。
(恥ずかしい……恥ずかしい……!)
今すぐ消えてなくなりたかった。出来ることなら数分前に戻って、発言を取り消したい。
肉体関係を迫った挙句、泣き出した光莉に瀧澤は困ったように天を仰いだ。
「理由をキチンと話してくれ。そうでないと、私も君が本気なのか分からない」