スパダリ御曹司のお相手が、私でいいのでしょうか?~一晩だけのはずが溺愛が終わりません~

「すまない。タクシーが渋滞で遅れてしまって……!」

 聞き慣れたバリトンが耳に飛び込んできて、自己嫌悪に浸っていた光莉はパッと顔を上げた。
 そこには息を弾ませたスーツ姿の瀧澤が立っていた。

「た、瀧澤専務……!」
「また、泣いていたのか?君は存外、泣き虫なんだな」

 瀧澤はふっと表情を緩ませると、いつの間にか目尻から流れ出ていた涙を指で丁寧に拭ってくれた。優しい指使いに余計に泣きそうになる。
 来てくれないのかと思ったのに、瀧澤は約束を違えなかった。
 遅刻したことを責める気持ちは失せ、嬉しさが込み上げてくる。

 瀧澤はスンと鼻を啜る光莉の手を握り、ソファから立ち上がらせた。

「行くぞ」
「あ、お会計が……!」

 瀧澤はテーブルの上から伝票を取り上げると、ウェイターにそのまま渡した。

「3202号室につけておいてくれ」

 ティーラウンジから出た瀧澤は、真っ直ぐエレベーターホールに向かった。
 光莉は先を歩く瀧澤の背中をただただ見つめるばかりだった。
 今からこの人に抱かれるのだと、胸をときめかせることしかできない。

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