スパダリ御曹司のお相手が、私でいいのでしょうか?~一晩だけのはずが溺愛が終わりません~
(今日に限って……!)
予期せぬ渋滞に巻き込まれ、約束の時間から随分遅れてホテルに到着した久志は、心の中で悪態をついた。
光莉にメッセージを送っても一向に既読にならない。
もしかしたら、既に帰ってしまっているかも。いや、そもそもラウンジに来ていないのではないか?
互いに酔っている状態で行為に及ぶよりはと、一日置いてはみたものの、光莉の気持ちが変わってしまう可能性だって十分にあった。
疑念が次々と頭をもたげては、久志を支配していく。
思わず足が止まりそうになりながらも、ロビーを早足で駆け抜ける。
(いた……)
物憂げな表情でテーブルの一点を見つめていた光莉は痛々しいほどに儚げだった。
ティーラウンジで待っている光莉を見つけた瞬間、久志はなぜかホッとしていた。
そして、そんな感情が湧き出る自分自身に驚いた。
……ただの同情心のつもりだった。
抱いて欲しいと告げられた時、確かに久志はなんてことを言うのだろうと無鉄砲な光莉に呆れていた。しかし、その反面ほのかな喜びも感じていた。
そう、久志も光莉をこの腕の中に閉じ込めたいと望んでいたのだ。
膨らんだ想いは決して無視できない熱量を放っている。
光莉に男として望まれているという高揚感が久志を次の行動へと突き動かした。
「遅れてすまない!」
久志が約束通り来たことに涙する光莉に、女性としての自信を必ず与えてみせる。
……後悔はさせない。
彼女に男性から愛される喜びを教えるのは自分の役割だと、久志は自負していた。