スパダリ御曹司のお相手が、私でいいのでしょうか?~一晩だけのはずが溺愛が終わりません~

 執務室はTAKIZAWA自慢のインテリアで埋め尽くされていた。
 高級感のある両袖デスクとレザーチェアはビジネスシーンに最適な『インテリジェンスシリーズ』で、ローテーブルと光莉が座っているソファは『エレガントシリーズ』だ。
 光莉を執務室に呼んだ張本人――瀧澤久志(たきざわひさし)はレザーチェアから立ち上がると、ゆっくりと光莉の前に腰を下ろした。

(この人が、瀧澤専務……)

 社内広報誌でチラと見かけたことはあったが、実際にお目にかかるのは初めてだ。
 瀧澤は三十三歳という若さにしてTAKIZAWAの専務を務めている傑物だ。その名の通り、TAKIZAWAの創業者一族の直系筋にあたる。確か、初代社長のひ孫という話だ。
 同族経営が敬遠されがちな昨今。営業不振に陥っていた子会社を半年で黒字に押し上げた辣腕を買われ、一年前にTAKIZAWA本社の専務に就任した。
 コネでもなく実力で今の地位に上り詰めた瀧澤は創業者一族の秘蔵っ子と名高い。

「法人営業部の出水光莉さんで間違いないな?」
「はい」

 重々しく名前を呼ばれ、光莉はゴクリと生唾を飲んだ。

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