スパダリ御曹司のお相手が、私でいいのでしょうか?~一晩だけのはずが溺愛が終わりません~
上海出張の全日程を終え、帰国の便に乗った久志は飛行機の座席に身体を埋めると、ようやくひと心地ついた。
轟音とともに離陸していく飛行機の小さな窓から上海の夜景を眺める。
百万ドルの夜景をぼんやり眺めているとあの夜のことを思い出さずにはいられない。
(彼女は今頃どうしているだろう……)
上海出張の最中もいつだって頭の片隅では光莉のことを考えていた。
上海に行くと書置きは残したものの、ひとりにされて戸惑っていないだろうか。泣いたりしていないだろうか。
果たして久志は光莉を満足させることはできたのだろうか。
考えは尽きそうにない。
早く日本に着かないのかと、変えられない飛行機の速度に文句のひとつでも言ってやりたくなる。
そんな自分に自嘲の笑みが湧く。
光莉を抱いてから、どこかおかしいと久志は自覚していた。
(彼女に会いたい……)
逸る気持ちを押さえるように息を吐きだす。こんなことはありえない。女性を恋しいと思うのは、久志の人生で初めての経験だった。
(惹かれている?まさか)
しかし、否定しようのない感情に、久志自身どうにもまいってしまう。
(……一夜の関係で終わらせたくない)
胸に抱くこの想いを打ち明けたら、応えてくれるだろうか。