スパダリ御曹司のお相手が、私でいいのでしょうか?~一晩だけのはずが溺愛が終わりません~
(いつのまに……)
光莉は昨夜の出来事を思い出し、ひとり顔を赤らめた。やっぱり、夢じゃないんだ。
瀧澤に導かれるようにして、自分の身体の中に彼の一部を受け入れた。
(瀧澤専務、優しかったな……)
旅立ちの前夜にわざわざ時間を作って駆けつけてくれたことを、申し訳ないと思うと同時に嬉しくもあった。
瀧澤は行為の最中も光莉の身体を綺麗だと何度も褒めてくれた。自分の一番ダメな部分を曝け出してもなお、優しく抱いてもらえたことで、斗真につけられた傷が少しだけ塞がったような気がした。
(まさか、付き合ってもいない人とあんなことをするなんて……)
……しかも、相手はTAKIZAWAの専務だ。
結婚するまで貞操を守るべきという大昔の価値観を守っているわけではないが、光莉は誰からかまわず男性と関係をもつことは控えるべきだと思っているし、実際にそういった振る舞いをしてきた。
お酒の席で忽然と消える男女には少なからず不快感を抱いたし、恋人がいるのに他の人と関係を持つなんてもってのほか。
瀧澤との一夜はそんな倫理観をすべて壊した。
ひとからは指を指される行為かもしれないが……不思議と後悔はしていない。
(上海かあ……。遠いなあ……)
シャワーを終えた光莉はリビングルームのカーテンを開け放った。
太陽が天高く昇った今は昨夜のような夜景は見えない。透けるような青空と流れていく雲ばかりが視界を埋める。
この景色の中のどこにも瀧澤はいないのだと思うと、光莉は侘しいものを感じたのだった。