スパダリ御曹司のお相手が、私でいいのでしょうか?~一晩だけのはずが溺愛が終わりません~

(まさか……。クビ……!?)

 呼び出された理由を考えてみると、クビか昇進ぐらいしか見当がつかない。
 昇進には悉く縁がないので、そうなるとあとはクビ一択。

 ……三ヶ月前、人事評価制度が変わったのは知っている。
 年功序列ではなく個人の資質や成果を重視する現制度を推し進めたのは瀧澤だという話だ。
 これまで上司の陰に隠れていた有能な社員にスポットが当たるようになった一方、成果の少ない落ちこぼれの社員には少し厳しい状況だ。
 新卒で入社して五年目。
 ようやくヘマや凡ミスがなくなり、柳瀬から得意先を任されたり、褒められる機会も増えてきた。それまで頭よりもまず身体が動いてしまうこの性格のせいで「落ち着きがない」と何度注意されたことか。
 自分が人より時間をかけてゆっくり成長するタイプだという自覚はあったし、努力はしてきたつもりだったが、不十分だということだろうか。

(クビは嫌〜っ!)

 体力と根性ぐらいしか取り柄がなく、突出したビジネススキルのない自分に、再就職先が見つけられるとは到底思えない。

「出水さん」

 光莉は覚悟を決め、固く目を瞑り、瀧澤の次の言葉を待った。
 ところが、瀧澤が告げたのは昇進でもなければ、クビでもなかった。

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