スパダリ御曹司のお相手が、私でいいのでしょうか?~一晩だけのはずが溺愛が終わりません~
「ねえ、また呼びされたって聞いたけど本当に大丈夫なの?」
「あ、えっと……」
デスクに戻るなり柳瀬から詰問され、光莉は言葉に詰まった。
サンライズホテルグループとの大口契約締結の件は既に社内に広まっている。
光莉が今、手にしているテニスコンペの実施要項だって、安西会長率いるサンライズホテルグループが主催だ。
瀧澤にテニスを手ほどきしたことは、この大会でダブルスを組んで出場すればどちらにせよすぐにバレる。
光莉はとうとう自らの秘密を柳瀬に打ち明けた。
「実は以前から瀧澤専務からテニスを教えていまして……。サンライズホテルグループの安西会長がテニスがすごくお好きな御方だったので、接待でダブルスを組むことになったんです」
柳瀬は口をあんぐりと開けた。柳瀬にとっては寝耳に水の話だ。無理もない。
「そうだったの!?あーそっか!光莉ちゃん、テニス得意だもんね!良かった!心配してたんだよ?」
「黙っていてすみませんでした」
心配で曇っていた柳瀬の表情がパッと明るくなっていく。
「謎が全て解けたよ!いそいそと定時で帰るから『法人営業部のアイドルにもとうとう彼氏が!?』って男性陣が残念そうにしてたんだよ?」
「あはは!アイドルなんてそんなあ〜!大袈裟ですよ!」
「ねえねえ、専務ってどんな人なの?結構優しい?それとも噂通り気難しい?」
「えっと……」
俄然前のめりになる柳瀬に何と答えればいいものか。
……色んな意味で優しかったです。
いや、ダメだ。こんなこと口が裂けても言えない!
「とっても真面目です!」
当たり障りのない部分を伝えると、柳瀬はぶーと不貞腐れた。