スパダリ御曹司のお相手が、私でいいのでしょうか?~一晩だけのはずが溺愛が終わりません~

「瀧澤くん」

 ベンチに戻ろうとした瀧澤と光莉は安西夫婦から声を掛けられ足を止めた。

「安西会長、本日は弊社にも声をかけていただきありがとうございます」
「ぜひ楽しんでいってくれ」
「今日は参加されないんですか?」
「一応、運営の責任者だからね。私が出場するとうちの社員は萎縮してしまうかもしれないだろう?」

 安西会長は運営に徹するつもりだと、ポロシャツ姿で朗らかに笑った。
 コンペの参加者は総勢八十組ほど。
 サンライズホテルグループ以外にも、TAKIZAWA同様安西会長からお声がかかった他企業の参加者も多い。

「貴女達、優勝候補だから頑張ってね。賞品もたくさん用意してるのよ」

 安西夫人は瀧澤の後ろに隠れていた光莉にも優しく声を掛けてくれた。

「頑張ります!」

 光莉は気合い充分でそう答えた。
 テニスコンペはトーナメント形式で行われる。瀧澤と光莉はシード枠として二回戦目から登場する予定だ。
 一回戦目の試合がすべて終わると、まもなく出番が訪れる。

「瀧澤専務〜!頑張ってくださ〜い!」

 試合開始前のウォーミングアップにも関わらず、観客から声援が飛んでくる。サンライズホテルグループとの大口契約を取り付けることに成功した瀧澤の評価はうなぎのぼりだ。
 そのせいなのか、瀧澤と比例するように光莉にヘイトが集まる。

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