スパダリ御曹司のお相手が、私でいいのでしょうか?~一晩だけのはずが溺愛が終わりません~

「何であの人が瀧澤専務とペアなの?」
「私も瀧澤専務と組みたかった!」

(うわっ……集中できない……)

 外野から応援以外の声が聞こえてくることなど、あまり経験がない。
 ゲームが始まったら静かに観戦するのがマナーだが、彼女達は知っているだろうか。
 光莉は意識を集中するため、大きく息を吸いそして吐き出した。
 どうして瀧澤と光莉がダブルスを組むことになったのか説明する時間はない。あくまで結果で証明しなければ、彼女達は納得しない。
 そうやって知らず知らずのうちに力んでいたのだろう。
 光莉のサービスで始まったゲームだったが、サービスは一本も相手コートに入ることなくネットに吸い込まれていった。

「ダブルフォールト!サービスチェンジ!」

 審判の声を聞いて、光莉の表情が固まる。

(やってしまった……)
 
 四回連続のダブルフォールト。サービスが一本も決まらないうちにワンゲームを落としてしまった。

「どうした?調子でも悪いのか?」
「すみません」

 光莉は瀧澤に謝るとキャップを目深に被り直した。
 光莉とは対照的に瀧澤は絶好調だった。

 「よし!」

 続くゲームで見事なリターンエースを決め、光莉とハイタッチする。
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