スパダリ御曹司のお相手が、私でいいのでしょうか?~一晩だけのはずが溺愛が終わりません~
サービスが変わったその後も、光莉の動きは精彩を欠いていた。際どいショットはことごとく決まらず、失点を繰り返した。
瀧澤の奮闘と相手のミスもありなんとか初戦は勝てたものの、このままでは先が思いやられる。
「すみませんでした。今日は調子が上がらなくて」
「ダブルスの良いところは、他人を頼れるところだ。次の試合まで時間がある。ゆっくり休憩するといい」
瀧澤は光莉を気遣うようにポンと肩を叩き、結果を申告するため運営のテントへと向かった。
(なんでだろう……。インカレの決勝戦よりも緊張してた……?)
ベンチに残り荷物の片付けをしていると、不甲斐ない光莉に観客席から容赦のない罵声が浴びせられた。
「ねえ、あの人なんなの?」
「瀧澤専務の足を引っ張ってばかりで最悪〜」
「私の方が上手かも」
瀧澤に聞かれないように一人きりになったタイミングであからさまな悪口を言われ、光莉はきゅっと口を引き結んだ。
(テニスが唯一の取り柄なのに……)
テニスでも結果を出せなければ光莉に価値はない。暗雲が心の中に立ち込める。