スパダリ御曹司のお相手が、私でいいのでしょうか?~一晩だけのはずが溺愛が終わりません~
「両手が塞がっている。鍵を開けてくれ」
どうやら瀧澤はこのまま家の中に入るつもりらしい。言われた通り、家の鍵を開けると、荷物が多くて乱雑なアパートの一室がお目見えする。
瀧澤は光莉をダイニングチェアに座らせると、冷蔵庫にドリンクとパウチ飲料の余りを入れてくれた。
「他に何かいるものはあるか?買ってくる」
「大丈夫です!本当にありがとうございました!」
「何かあったらすぐに……」
瀧澤がなんとはなしにダイニングチェアの背もたれに手をかけようとした瞬間、光莉が叫んだ。
「その椅子に触らないでください!」
瀧澤は弾かれたように椅子から手を離した。
「すまない……」
光莉は眉を下げ謝る瀧澤に慌てて被りを振り、突然叫び出した理由を説明した。
「ち、違うんです!実はこの椅子壊れているんです」
普段はひとりきりなので、壊れかけの椅子を置いておいても気に留めていなかった。
もし瀧澤が壊れていることを知らずに、この椅子に座ってしまっていたら一大事になるところだった。