スパダリ御曹司のお相手が、私でいいのでしょうか?~一晩だけのはずが溺愛が終わりません~
光莉は椅子にかかっていた布を取り払い座面を見せた。
「座面が割れちゃって……。残念だけど今は使ってないんです」
「これは……例のお祖父さんの椅子か?」
「はい」
座面が割れたのは光莉の不注意によるものだ。部屋の模様替えをした際に、何も考えずに直射日光の当たる窓際に置き場所を変更してしまった。
その結果、寒暖差で木を痛めることになった。
元々、長年の使用で椅子そのものが劣化していたせいもあるが、ある日突然パックリと割れてしまったのだ。
瀧澤は座面が割れた椅子を上下からじっくり観察した。座面の裏に刻印されている型番にも目を通す。
「『オータムシリーズ』の初期型だな。これなら直せると思う」
「本当ですか!?」
「ああ」
祖父の椅子が直せると聞いて、光莉は俄然元気になった。
「修理しに行くか?」
「行きたいです!」
「……元気が出て良かった」
瀧澤は安心したように呟くと、光莉の頭をポンポンと叩き帰って行った。
(なんであんなに嬉しそうだったんだろう……)
光莉はキョトンと目を丸くするばかりだった。