出会ったのは間違いでした 〜御曹司と始める偽りのエンゲージメント〜
週末の金曜日になった。龍と会えないまま一週間が過ぎ、声を聞けないまま数日が経った。考えるとほんの数日の出来事なのに、ずいぶんと長い時間に感じる。けれど、それはまもなく一つの結末を迎えるはずだ。
先週あんなに続いていたトラブルはすっかり鳴りを潜め、社員たちはそれぞれの仕事に励んでいた。実乃莉も、何事もないかのように業務を進めていた。龍が戻ってきたとき少しでも安心してもらえるように。
あれから龍とは連絡を取っていない。メッセージを送っても既読が付くことはなく、その理由が奨生から聞いた話につながっている気がした。
奨生が、トラブルのあった取引先のリストを手にこの会社にやって来たのは一昨日の水曜日のことだった。
「共通点見つけたよ」
社長室に入ってくるなり声を上げた奨生は、素っ気ないようでどこか高揚しているように聞こえた。
そして深雪が使っている社長席に歩み寄ると数枚の紙を広げた。
「一番最初にあったシステムエラーが目眩しになってた。あれは一連の件とは無関係で起こったやつ。つってもこっちが悪いわけじゃなくて、向こうの会社の人為的ミスが原因」
そう言ったあと、奨生はリストの下を指差した。
「けどあとで起こったトラブル。その大半がある企業の下請けや孫請けだった。それがここ」
リストの取引先の横には、元請け企業の有名な電機機器メーカーの名が記載されていた。
それを見た深雪は途端に顔を顰めている。奨生はそんな深雪に構うことなく続けた。
「今、龍が言ってる京都の会社。ここについてはもう隠す気もないらしい。この企業のグループ会社の一つだ。急にシステムリプレイスに関わることになったらしい。原田さんに聞いてみたんだけど、何故龍に声が掛かったのか、なんで受けたのか理由がわからないって」
一息に奨生が言ったあと、顔を歪めて盛大に溜め息を吐いたのは深雪だった。
「本当、ろくでもない話ね。龍を逆恨みしているのか、復縁を狙ってるのかは知らないけど。ここまでするなんて……蛇のような女」
不快感を露わにして深雪は吐き捨てる。確かにそうだが、実乃莉はやはり納得できないでいた。瞳子が一人でここまでするのだろうかと。
実乃莉が考え込んでいると、また奨生が話し出した。
「で。例の噂の出どころ探ってたら、変な話し聞いた」
「変?」
その場にいたものが一斉に奨生に向く。奨生は頷いたあと、その内容を話し出した。
先週あんなに続いていたトラブルはすっかり鳴りを潜め、社員たちはそれぞれの仕事に励んでいた。実乃莉も、何事もないかのように業務を進めていた。龍が戻ってきたとき少しでも安心してもらえるように。
あれから龍とは連絡を取っていない。メッセージを送っても既読が付くことはなく、その理由が奨生から聞いた話につながっている気がした。
奨生が、トラブルのあった取引先のリストを手にこの会社にやって来たのは一昨日の水曜日のことだった。
「共通点見つけたよ」
社長室に入ってくるなり声を上げた奨生は、素っ気ないようでどこか高揚しているように聞こえた。
そして深雪が使っている社長席に歩み寄ると数枚の紙を広げた。
「一番最初にあったシステムエラーが目眩しになってた。あれは一連の件とは無関係で起こったやつ。つってもこっちが悪いわけじゃなくて、向こうの会社の人為的ミスが原因」
そう言ったあと、奨生はリストの下を指差した。
「けどあとで起こったトラブル。その大半がある企業の下請けや孫請けだった。それがここ」
リストの取引先の横には、元請け企業の有名な電機機器メーカーの名が記載されていた。
それを見た深雪は途端に顔を顰めている。奨生はそんな深雪に構うことなく続けた。
「今、龍が言ってる京都の会社。ここについてはもう隠す気もないらしい。この企業のグループ会社の一つだ。急にシステムリプレイスに関わることになったらしい。原田さんに聞いてみたんだけど、何故龍に声が掛かったのか、なんで受けたのか理由がわからないって」
一息に奨生が言ったあと、顔を歪めて盛大に溜め息を吐いたのは深雪だった。
「本当、ろくでもない話ね。龍を逆恨みしているのか、復縁を狙ってるのかは知らないけど。ここまでするなんて……蛇のような女」
不快感を露わにして深雪は吐き捨てる。確かにそうだが、実乃莉はやはり納得できないでいた。瞳子が一人でここまでするのだろうかと。
実乃莉が考え込んでいると、また奨生が話し出した。
「で。例の噂の出どころ探ってたら、変な話し聞いた」
「変?」
その場にいたものが一斉に奨生に向く。奨生は頷いたあと、その内容を話し出した。