出会ったのは間違いでした 〜御曹司と始める偽りのエンゲージメント〜
「お父さん、何かお急ぎのご用事ですか?」
『実乃莉。皆上先生のご子息と交際していると言うのは本当なのか』
(なっ、なんで⁈)
あまりにも早い伝わりように驚愕しながら龍を見る。龍は深刻な表情を浮かべてスマートフォンの画面を見ていた。
「そ、それは、あのっ」
こんな瞬く間に父の耳に入るとは思いもせず実乃莉は慌てふためいてしまった。
『つい今しがた、高木君からそのような報告を受けた。最初から知っていればこの話は受けなかった、恥をかかされたと大層立腹していたが。どうなんだ?』
「……申し訳ありません」
あと先考えず起こした行動がこんなことになるなんて実乃莉は想像すらしなかった。龍に恋人のふりを頼んだのはその場しのぎで、どこの誰かも知らなければ適当に言い逃れできる、そんな浅知恵からだった。けれど今は、そんな言い逃れすらできそうになかった。
(いったい……どうしたらいいの?)
『実乃莉。謝ったところで状況が掴めないだろう。どうなっている』
電話の向こうから苛立った父の声が聞こえてくるが、それに答えることができず黙り込んでしまう。
自分の浅はかさに落胆し俯いた実乃莉の耳に、「その電話、代わる」と突然声が届いた。
感情を読むことができない無表情の龍の顔を見つめたまま、実乃莉は戸惑っていた。龍は早く寄越せといわんばかりに手を広げ振っている。
「いいから貸して」
龍が手を差し出しているのを見つめながら、実乃莉は「お父さん、今皆上さんに代わります」と告げスマートフォンを耳から離した。
龍はそれを受け取ると立ち上がり話し出した。
「ご挨拶が遅れ、もうしわけございません」
そう切り出したかと思うと、龍は話しを続けながら席から離れて行った。
『実乃莉。皆上先生のご子息と交際していると言うのは本当なのか』
(なっ、なんで⁈)
あまりにも早い伝わりように驚愕しながら龍を見る。龍は深刻な表情を浮かべてスマートフォンの画面を見ていた。
「そ、それは、あのっ」
こんな瞬く間に父の耳に入るとは思いもせず実乃莉は慌てふためいてしまった。
『つい今しがた、高木君からそのような報告を受けた。最初から知っていればこの話は受けなかった、恥をかかされたと大層立腹していたが。どうなんだ?』
「……申し訳ありません」
あと先考えず起こした行動がこんなことになるなんて実乃莉は想像すらしなかった。龍に恋人のふりを頼んだのはその場しのぎで、どこの誰かも知らなければ適当に言い逃れできる、そんな浅知恵からだった。けれど今は、そんな言い逃れすらできそうになかった。
(いったい……どうしたらいいの?)
『実乃莉。謝ったところで状況が掴めないだろう。どうなっている』
電話の向こうから苛立った父の声が聞こえてくるが、それに答えることができず黙り込んでしまう。
自分の浅はかさに落胆し俯いた実乃莉の耳に、「その電話、代わる」と突然声が届いた。
感情を読むことができない無表情の龍の顔を見つめたまま、実乃莉は戸惑っていた。龍は早く寄越せといわんばかりに手を広げ振っている。
「いいから貸して」
龍が手を差し出しているのを見つめながら、実乃莉は「お父さん、今皆上さんに代わります」と告げスマートフォンを耳から離した。
龍はそれを受け取ると立ち上がり話し出した。
「ご挨拶が遅れ、もうしわけございません」
そう切り出したかと思うと、龍は話しを続けながら席から離れて行った。