出会ったのは間違いでした 〜御曹司と始める偽りのエンゲージメント〜
「大変美味しくいただきました。ご馳走様でした」
実乃莉は香りのよいダージリンティーを楽しみながら笑顔でそう口にする。
「そうか。じゃ、お返しに俺の頼みをきいてくれないか?」
笑みを浮かべたまま唐突に言う龍に面食らいながら、実乃莉は小さく頷く。
「頼み、ですか? もちろんです。私にできることなら……」
「まあ、適任と言えば適任だな。まだ時間はあるか? 場所変えて話ししたいんだが」
龍はそう言いながら自分の腕時計を確かめる。スーツの袖から覗く銀色の時計は海外のハイブランドのものだ。それが凄みのある容姿に嫌味なく馴染んでいる。
「はい。構いません。今日はもう帰宅するだけですし……」
極上の料理を前に現実逃避していたが、このあとは父からの小言が待ち受けている。それを考えると少しでも先延ばししたい気分だ。
それに、龍からはまだ父の様子も聞いていない。できれば詳しく聞いておきたいと思っていた。
「よし。決まりだな。しばらく付き合ってくれ」
最初と比べるとずいぶん態度を軟化させた龍は、そう言って不敵な笑みを浮かべた。
(私が適任……? なにかしら?)
わざわざ自分に頼みごとなどする必要あるのだろうかと不思議に思いながらも実乃莉は頷いた。
レストランを出るとそのままホテルの駐車場に連れられて行き、そこで龍のイメージにぴったりな、黒色で艶のある大型SUV車に乗せられた。
「とって食ったりしないから。そう緊張するなって」
今からどこに連れて行かれるのかと不安な実乃莉は緊張で固まっていた。その姿が相当面白かったようだ。ずいぶんと砕けてきた口調で、龍はハンドルを握ったまま笑っている。
実乃莉が親族以外の男性の車に乗るのは初めてだった。緊張するなと言われても車内に二人きりだと思うだけで肩に力が入った。
実乃莉は香りのよいダージリンティーを楽しみながら笑顔でそう口にする。
「そうか。じゃ、お返しに俺の頼みをきいてくれないか?」
笑みを浮かべたまま唐突に言う龍に面食らいながら、実乃莉は小さく頷く。
「頼み、ですか? もちろんです。私にできることなら……」
「まあ、適任と言えば適任だな。まだ時間はあるか? 場所変えて話ししたいんだが」
龍はそう言いながら自分の腕時計を確かめる。スーツの袖から覗く銀色の時計は海外のハイブランドのものだ。それが凄みのある容姿に嫌味なく馴染んでいる。
「はい。構いません。今日はもう帰宅するだけですし……」
極上の料理を前に現実逃避していたが、このあとは父からの小言が待ち受けている。それを考えると少しでも先延ばししたい気分だ。
それに、龍からはまだ父の様子も聞いていない。できれば詳しく聞いておきたいと思っていた。
「よし。決まりだな。しばらく付き合ってくれ」
最初と比べるとずいぶん態度を軟化させた龍は、そう言って不敵な笑みを浮かべた。
(私が適任……? なにかしら?)
わざわざ自分に頼みごとなどする必要あるのだろうかと不思議に思いながらも実乃莉は頷いた。
レストランを出るとそのままホテルの駐車場に連れられて行き、そこで龍のイメージにぴったりな、黒色で艶のある大型SUV車に乗せられた。
「とって食ったりしないから。そう緊張するなって」
今からどこに連れて行かれるのかと不安な実乃莉は緊張で固まっていた。その姿が相当面白かったようだ。ずいぶんと砕けてきた口調で、龍はハンドルを握ったまま笑っている。
実乃莉が親族以外の男性の車に乗るのは初めてだった。緊張するなと言われても車内に二人きりだと思うだけで肩に力が入った。