出会ったのは間違いでした 〜御曹司と始める偽りのエンゲージメント〜
「今向かってるのは俺の会社。土曜だが社員は数人仕事してるはずだから安心しろ」
「と言うと、社長をされていらっしゃるんですか?」
「まぁ、まだペーペーだけどな。この四月に立ち上げたばかりだから、今四ヶ月目ってところ。事務所はそんなに大きくもないし綺麗でもないから期待はするなよ?」
龍は車を走らせながらそんなことを口にする。その軽い口調に、だんだんと打ち解けてくれている気がした。
「会社を経営されているだけで立派なことだと思います。差し支えなければ、どんなことをされているか聞いても?」
「あぁ。システムやアプリの開発してる。俺は元々SE……、システムエンジニアやっててな。いつかは独立しようと思っていたんだが、やっと去年それが叶った」
前を向いたまま話す龍はどこか感慨深そうだ。
そんな横顔を眺めて実乃莉は羨ましく思う。今まで自分はそんなふうに努力して何かを掴み取ったことなどない。ただ与えられたことを淡々とこなしているだけなのだから。
「そうなんですね。努力してこられたんですね……」
「まぁ、してないって言えば嘘になるな。親父に言わせたらまだまだだって鼻で笑われるレベルだが」
笑ってはいるが、その話ぶりからやはり父親との関係が友好的とは思えなかった。けれどそれは実乃莉も同じだった。だからこそ、この人なら自分の苦悩もわかってくれるかも知れない。
けれど、たまたま知り合っただけの人に自分の気持ちを聞いてもらっても重いだけ。実乃莉は縋りたい気持ちを胸の奥に押し込めた。
「と言うと、社長をされていらっしゃるんですか?」
「まぁ、まだペーペーだけどな。この四月に立ち上げたばかりだから、今四ヶ月目ってところ。事務所はそんなに大きくもないし綺麗でもないから期待はするなよ?」
龍は車を走らせながらそんなことを口にする。その軽い口調に、だんだんと打ち解けてくれている気がした。
「会社を経営されているだけで立派なことだと思います。差し支えなければ、どんなことをされているか聞いても?」
「あぁ。システムやアプリの開発してる。俺は元々SE……、システムエンジニアやっててな。いつかは独立しようと思っていたんだが、やっと去年それが叶った」
前を向いたまま話す龍はどこか感慨深そうだ。
そんな横顔を眺めて実乃莉は羨ましく思う。今まで自分はそんなふうに努力して何かを掴み取ったことなどない。ただ与えられたことを淡々とこなしているだけなのだから。
「そうなんですね。努力してこられたんですね……」
「まぁ、してないって言えば嘘になるな。親父に言わせたらまだまだだって鼻で笑われるレベルだが」
笑ってはいるが、その話ぶりからやはり父親との関係が友好的とは思えなかった。けれどそれは実乃莉も同じだった。だからこそ、この人なら自分の苦悩もわかってくれるかも知れない。
けれど、たまたま知り合っただけの人に自分の気持ちを聞いてもらっても重いだけ。実乃莉は縋りたい気持ちを胸の奥に押し込めた。