出会ったのは間違いでした 〜御曹司と始める偽りのエンゲージメント〜
「向こうの言い分はね、『個室でディナーと言っておいたのに、ただのランチでがっかりした。もう付き合いきれない』ですって。こっちの苦労なんてまるで知ろうとしないんだから。失礼しちゃうわ!」
かなり腹を立てている様子から、深雪はその相手をあまり良く思っていないのが見てとれる。
「予約で手間取らせたのは悪かったって。実乃莉が代わりをしてくれたし、キャンセルせずに済んだんだが」
「そう言う問題じゃないでしょ! だいたいね、私は最初に忠告したわよね。本気になれないんなら付き合うなって。あのわがまま女に振り回されたこっちの身にもなってよね!」
社長と部下と言うには、部下が強めの会話に目を丸くしながら実乃莉はただ二人を眺めていた。
「って、何で彼女が代わり?」
聞き流していた台詞にふと気づいたのか、深雪は唖然とした顔で龍に尋ねた。
「なんだ。遠坂に何も聞いてないのか?」
「どうしてまだ帰ってきてない洸が出てくるのよ。聞いてるわけないじゃない」
(遠坂さんって……ご友人の……)
龍がレストランでちらりと口にしたその名前は、高木のことを龍に教えた人物だ。その人はおそらく深雪の夫なんだろう。
「そうか。さすがにあいつがベラベラ喋ったりしないわな。実乃莉とはたまたまレストランで居合わせたんだ。で、成り行きで交際することになった」
軽い口調で告げた龍に、深雪は眉を顰める。
「何の冗談? 貴方が政界進出狙ってたなんて知らなかったけど。それ、あなたのお父様は知ってるの?」
「そりゃ、もちろん。残念ながら光の速さで伝わってた。それを皆上議員の優秀な秘書様がわざわざ教えてくれたってわけだ」
どこまでも飄々としている龍を見て、深雪は深い溜め息を吐いている。
「あのっ。それには事情があって……。皆上さんは私を助けてくださったんです」
実乃莉は意を決して二人の会話に割り込むと、これまでの出来事を深雪に説明し始めた。
かなり腹を立てている様子から、深雪はその相手をあまり良く思っていないのが見てとれる。
「予約で手間取らせたのは悪かったって。実乃莉が代わりをしてくれたし、キャンセルせずに済んだんだが」
「そう言う問題じゃないでしょ! だいたいね、私は最初に忠告したわよね。本気になれないんなら付き合うなって。あのわがまま女に振り回されたこっちの身にもなってよね!」
社長と部下と言うには、部下が強めの会話に目を丸くしながら実乃莉はただ二人を眺めていた。
「って、何で彼女が代わり?」
聞き流していた台詞にふと気づいたのか、深雪は唖然とした顔で龍に尋ねた。
「なんだ。遠坂に何も聞いてないのか?」
「どうしてまだ帰ってきてない洸が出てくるのよ。聞いてるわけないじゃない」
(遠坂さんって……ご友人の……)
龍がレストランでちらりと口にしたその名前は、高木のことを龍に教えた人物だ。その人はおそらく深雪の夫なんだろう。
「そうか。さすがにあいつがベラベラ喋ったりしないわな。実乃莉とはたまたまレストランで居合わせたんだ。で、成り行きで交際することになった」
軽い口調で告げた龍に、深雪は眉を顰める。
「何の冗談? 貴方が政界進出狙ってたなんて知らなかったけど。それ、あなたのお父様は知ってるの?」
「そりゃ、もちろん。残念ながら光の速さで伝わってた。それを皆上議員の優秀な秘書様がわざわざ教えてくれたってわけだ」
どこまでも飄々としている龍を見て、深雪は深い溜め息を吐いている。
「あのっ。それには事情があって……。皆上さんは私を助けてくださったんです」
実乃莉は意を決して二人の会話に割り込むと、これまでの出来事を深雪に説明し始めた。