出会ったのは間違いでした 〜御曹司と始める偽りのエンゲージメント〜
「あれ? 実乃莉ちゃん、龍さんの誕生日知らない?」
糸井は意外そうな顔を実乃莉に向ける。そんな話しをした覚えがない実乃莉は「はい」と頷いた。
「七月三十一日。実乃莉ちゃん入社して十日くらい経ってたよね。てっきり知ってると思ってた」
そう言えば龍は一番最初に『まもなく三十四になる』と言っていた。そんなにすぐだったなんて、と実乃莉は落胆した。
「祝われて喜ぶような柄じゃない。お前たちが気持ちだって差し入れくれただけで充分だ」
「ああ、あれね〜。みんな考えること一緒だったよね。下のコンビニ、当日エナドリと栄養ドリンクの棚スカスカになってたし」
糸井が笑いながらそんなことを言うのを聞き実乃莉は思い出した。
(あの日か……。龍さんの机にいっぱい置いてた……)
そのときの実乃莉は何の不思議にも思わなかったが、普段は何も置かれていない机に、その日は朝から色々なものが置かれていた。飲みものを中心に、袋入りのお菓子やボトル入りのガムなど。そのほとんどは会社の下にある店で買ってきたもののようだった。
「俺の話はもういいだろ」
切り上げるように龍が言うと、糸井は実乃莉に勢いよく向いた。
「ねえ。実乃莉ちゃんは? 誕生日、いつ?」
「私、ですか?」
「うんうん」
期待の眼差しを向け大きく頷く糸井に、実乃莉はおずおずと口を開いた。
「再来週の……月曜日です」
もう過ぎていたなら気軽に言えたが、この流れで誕生日がもうすぐだなんてまるで祝ってくれと言っているようで気が引けた。けれど言わないわけにもいかず、実乃莉は正直に答えた。
「えっ! もうすぐじゃん! お祝いさせてよ。いいでしょ?」
案の定糸井は、興奮したようにそう言い出し、ちょっとしたお菓子くらいなら大丈夫かと思いながら実乃莉は頷いた。
「はい。ありがとうございます」
それに満面の笑みを浮かべると糸井は続けた。
「じゃあ、どこ行く? 何食べたい?」
糸井は意外そうな顔を実乃莉に向ける。そんな話しをした覚えがない実乃莉は「はい」と頷いた。
「七月三十一日。実乃莉ちゃん入社して十日くらい経ってたよね。てっきり知ってると思ってた」
そう言えば龍は一番最初に『まもなく三十四になる』と言っていた。そんなにすぐだったなんて、と実乃莉は落胆した。
「祝われて喜ぶような柄じゃない。お前たちが気持ちだって差し入れくれただけで充分だ」
「ああ、あれね〜。みんな考えること一緒だったよね。下のコンビニ、当日エナドリと栄養ドリンクの棚スカスカになってたし」
糸井が笑いながらそんなことを言うのを聞き実乃莉は思い出した。
(あの日か……。龍さんの机にいっぱい置いてた……)
そのときの実乃莉は何の不思議にも思わなかったが、普段は何も置かれていない机に、その日は朝から色々なものが置かれていた。飲みものを中心に、袋入りのお菓子やボトル入りのガムなど。そのほとんどは会社の下にある店で買ってきたもののようだった。
「俺の話はもういいだろ」
切り上げるように龍が言うと、糸井は実乃莉に勢いよく向いた。
「ねえ。実乃莉ちゃんは? 誕生日、いつ?」
「私、ですか?」
「うんうん」
期待の眼差しを向け大きく頷く糸井に、実乃莉はおずおずと口を開いた。
「再来週の……月曜日です」
もう過ぎていたなら気軽に言えたが、この流れで誕生日がもうすぐだなんてまるで祝ってくれと言っているようで気が引けた。けれど言わないわけにもいかず、実乃莉は正直に答えた。
「えっ! もうすぐじゃん! お祝いさせてよ。いいでしょ?」
案の定糸井は、興奮したようにそう言い出し、ちょっとしたお菓子くらいなら大丈夫かと思いながら実乃莉は頷いた。
「はい。ありがとうございます」
それに満面の笑みを浮かべると糸井は続けた。
「じゃあ、どこ行く? 何食べたい?」