愛され庭師は悪役令嬢に巻き込まれ……いえ、今世こそ幸せにしてあげたいです!
 甘い匂いのする花。
 ニゲラが好むのは、夏らしい橙色や赤い色をした花だったはずだ。
 導き出された答えに、ペリウィンクルは「まさか」と声を漏らす。その視線の先には、切り取られたハニーサックル……。

「まさか、犯人はヒロイン?」

「ペリウィンクルさん? どうなさったのですか?」

 呟いた途端に声をかけられて、ペリウィンクルは弾かれたように振り返った。
 視線の先に、鮮やかな赤紫色の朝顔の刺繍が施されたドレスを認め、彼女はほっと胸を撫で下ろしながら安堵の表情で相手の名前を呼ぶ。

「セリ様」

「そんなお顔をなさって。大丈夫ですか?」

 急いで駆け寄ってきてくれたセリは、シナモンとの猛特訓の甲斐もあって、ヴィヴァルディ語が喋れるようになっていた。
 ローズマリー抜きで会話出来るようになったことに感動しつつ、ペリウィンクルは愁いに満ちたため息を吐く。
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