愛され庭師は悪役令嬢に巻き込まれ……いえ、今世こそ幸せにしてあげたいです!
 既視感を覚えたペリウィンクルが「もしかして」と言う前に、顔を隠していた人物が勢いよく顔を上げた。
 ペリウィンクルを認めるなり歩み寄ってきたかと思えば、今度は手を握られる。

(わぁ、あったかい)

 うっかりそんなことを考えたのは、現実逃避だったのかもしれない。
 これから起こることに、ペリウィンクルは嫌な予感しかしなかった。

(悪役令嬢の恋を応援するなんて、そんなこと可能なのかな。いろいろ障害ありすぎない? だってほら、目の前のこの人。この人の恋を応援するって、とりあえず何をすれば良いわけ? っていう話ですよ)

 無表情で見上げてくるペリウィンクルがそんなことを思っているとも知らず、その人物は鬼気迫る顔で告げてきた。

「キミがペリウィンクルさんかいっ⁉︎ どうか、どうか助けてもらえないだろうか!」

 鬼気迫る顔をしているが、それでも綺麗だと思える顔立ちだ。
 ペリウィンクルは、目の前の人から星が降る音が聞こえてくるような気がした。
 雰囲気に飲まれて思わず「はい、喜んで!」と答えそうになりながら、すんでのところで踏み止まる。
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