愛され庭師は悪役令嬢に巻き込まれ……いえ、今世こそ幸せにしてあげたいです!
 ローズマリーは、前世の記憶を取り戻したことによる混乱からか、見知らぬ女が部屋にいたにもかかわらず、警戒することなく歩み寄る。
 対するペリウィンクルも、まさか同じ転生者と出会えるとは思ってもみなくて、この奇跡に驚きつつ歩み寄った。

 二人は無言でかたく握手を交わす。
 そして次の瞬間にはもう、熱く語り合っていた。
 それはまるで、マイナージャンルをさまようオタク同士が奇跡の出会いを果たしてしまったような独特の空気感であったと、のちに二人は語る。

 すっかり話し終えてみると、二人の境遇はよく似ていることがわかった。
 違うのは、今世での立場。ペリウィンクルがモブであることに対し、ローズマリーは悪役令嬢なのだ。

「なんてこと……ああ、ローズマリー。どうしてあなたはローズマリーなの……本当に、どうしてよ。どうして私が悪役令嬢なわけ? 私、めっちゃ頑張ったよ⁈  前世は社畜としてあんなにも頑張ったっていうのに、まだ頑張れって言うの⁉︎ せめて今世はゆっくり生きたかった。ローズマリーじゃ、幸せになれないじゃない!」

 その通り、とペリウィンクルは頷いた。
< 11 / 322 >

この作品をシェア

pagetop