愛され庭師は悪役令嬢に巻き込まれ……いえ、今世こそ幸せにしてあげたいです!
(一体、何に対して怒っているのだか)

 耳に当たる吐息に焦ってしまったが、彼は「サントリナが好きなのか」と言っていなかったか。

(まさか、ねぇ?)

 ヴィアベルは、サントリナにペリウィンクルを取られると思ったのだろうか。
 娘から彼氏を紹介された男親のような気持ちで、彼は怒っているのかもしれない。

 ペリウィンクルのことをずっと見てきたヴィアベルだ。
 そう思ってしまっても、おかしくはない気がしてくる。

「あの、ヴィアベル?」

「なんだ。私は、ぽっと出の娘におまえを取られるなど、到底許せない」

 おずおずと声をかけると、少しだけ柔らかさが戻った声が返ってくる。
 その声音は、どことなく拗ねているようにも聞こえた。
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