愛され庭師は悪役令嬢に巻き込まれ……いえ、今世こそ幸せにしてあげたいです!
4章
第25話 対峙する二人
紺色の夜空に、ぽっかりとまん丸の月が浮かぶ。
ランタンの灯りもいらないくらい、辺りは明るい。
隠すものが何もないのを心許なく思いながら、トゥルシーは足早に目的地へと急ぐ。
彼女の手には、切れ味の悪そうな古びたハサミが握り締められている。
花を切ってそのままにしていたような、錆びついたハサミだ。
トゥルシーがそれを大事に持っているのには、わけがあった。
使命感に満ちているような、それでいて思い詰めているような顔をしながら思い出すのは、親友のリコリスのことである。
『トゥルシー……わたし、やられっぱなしはもう嫌なの』
ローズクォーツのような目を涙で曇らせて、トゥルシーの親友は言った。
『わたし、ずっと我慢してきたわ。わたしなりに歩み寄ろうと努力もしてみた。それでもダメだったから、距離を置こうとしたの。でも、それも無駄だった。わたしがなにを言ったって、なにをしたって、あの方は気に入らないのよ。スルスにいるのは一年だけ。それだけ我慢すればいいって思っていたけれど……もう、我慢できなかった。限界だったの』
そう言った彼女が握りしめていたのが、今トゥルシーが握りしめているハサミだった。
ランタンの灯りもいらないくらい、辺りは明るい。
隠すものが何もないのを心許なく思いながら、トゥルシーは足早に目的地へと急ぐ。
彼女の手には、切れ味の悪そうな古びたハサミが握り締められている。
花を切ってそのままにしていたような、錆びついたハサミだ。
トゥルシーがそれを大事に持っているのには、わけがあった。
使命感に満ちているような、それでいて思い詰めているような顔をしながら思い出すのは、親友のリコリスのことである。
『トゥルシー……わたし、やられっぱなしはもう嫌なの』
ローズクォーツのような目を涙で曇らせて、トゥルシーの親友は言った。
『わたし、ずっと我慢してきたわ。わたしなりに歩み寄ろうと努力もしてみた。それでもダメだったから、距離を置こうとしたの。でも、それも無駄だった。わたしがなにを言ったって、なにをしたって、あの方は気に入らないのよ。スルスにいるのは一年だけ。それだけ我慢すればいいって思っていたけれど……もう、我慢できなかった。限界だったの』
そう言った彼女が握りしめていたのが、今トゥルシーが握りしめているハサミだった。