愛され庭師は悪役令嬢に巻き込まれ……いえ、今世こそ幸せにしてあげたいです!
『まさか、あなたが……?』

『ええ。わたしが、ローズマリー様の箱庭から花を盗んだ、花泥棒なの』

 親友のリコリスがローズマリーにいじめられていることは、彼女の口から何度も聞かされて知っていた。
 意地が悪いローズマリーは、リコリスが一人きりの時にしかいじめない。
 虫も殺せないような顔をしておいて、とんでもない人なのだ。

 リコリスが大切にしている形見であるハンカチを、ゴミだと言って捨ててしまったり。「優秀なあなたはもう頭に入っているでしょう?」と教科書をズタズタに引き裂いたり。ある時なんて、机に『学校ヤメロ』と書かれていて、彼女は泣きながら消したのだとか。

 リコリスはいつも明るくて元気で、トゥルシーに優しい。
 陰気で本の虫みたいな自分とは、まるで違う。
 彼女のそばにいると、太陽に照らされた月みたいに、穏やかな気持ちになれた。
 まるで自分が、普通の女の子になれたような気がしたのだ。
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