愛され庭師は悪役令嬢に巻き込まれ……いえ、今世こそ幸せにしてあげたいです!
 トゥルシーが花泥棒を代わることで、リコリスは疑われなくなるし、ローズマリーは苦い思いをする。
 これは、素晴らしい案に思えた。
 何より、覚えるのが得意なトゥルシーの頭には、この学校のあらゆる地図が入っている。巡回が強化されたとしても、関係ない。回り道はいくらだってあるのだから。

 寮から箱庭への道のりは、途方もなく遠く感じた。
 いつもならば数分で行ける距離を、探り探り歩いていく。
 ようやくローズマリーの箱庭へ着いた時、トゥルシーの息は上がっていた。

 ローズマリーの箱庭は、性悪女が造ったとは思えない可憐な雰囲気だった。
 大輪の白バラと薄紫色のミニバラが咲き誇り、月明かりに照らされたアルケミラ・モリスの黄緑色の花が、バラの魅力をさらに引き立てる。
 他の花々もしっかりと手が行き届いていて、文句のつけようもない。
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