愛され庭師は悪役令嬢に巻き込まれ……いえ、今世こそ幸せにしてあげたいです!
『そばにいるじゃない。今、私は中央の国にいるでしょう? 前よりずっと近いわ』

『そうだな。前よりは近くなった。だが、まだ足りないのだ』

 何が足りないのだろうか。
 まるで飢えた獣みたいだ。何をあげたら、彼は満足するのだろう。

 中央の国へ来てからというもの、ヴィアベルのことを知っているはずなのに、知らない人のように感じる機会が増えた。
 ただの過保護な妖精だと思っていたが、そうではないような──とそこまで考えて、いつも思考が止まる。

 今回もよくわからなくなってきて、結局考えることを放棄した。
 だって今は、ヴィアベルのことよりひっ迫した問題がある。

「わかった。ごめん。もうのけ者にしたりしないから。今度は、ちゃんとお願いするから。だから、機嫌直してよ」

「絶対だな? この約束、違えるなよ?」

「わーかったってば。それよりさ。ヴィアベルはさっき、そんなことかって言ったよね。どうして?」

「ああ、そうだ。ローズマリーは、しっかりとリコリスをいじめていたぞ。つい先日など、妖精の茶会の作法もろくに出来なかったのを、彼女が成敗していた」
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