愛され庭師は悪役令嬢に巻き込まれ……いえ、今世こそ幸せにしてあげたいです!
 ローズマリーの言葉に、ディルは肩を竦める。

「もうほとんど話してしまったことだし、ローズマリー嬢に頼むことにしよう」

「あら、良いんですの?」

「構わない。実は、このところトゥルシー嬢の様子がおかしくてな。何かに取り憑かれているというか、正気を失っているというか。さすがの僕も一人では妨害しきれなくなってきたので、実行される前にローズマリー嬢の庭師を懐柔して、誤魔化してもらおうと考えた次第だ」

「そういうことでしたか。もともとわたくしは、アルケミラ・モリスが盗まれたとしても、黙っているつもりでしたから、問題ありませんわ」

「それは、なぜだ?」

「恋する女の子を応援したいからです。わたくしの箱庭の花が、彼女の恋の一助になるのならば……むしろ本望ですわ。もともと、ハニーサックルが盗まれた時も、黙っているつもりでした。白バラさえ盗まれなければ、わたくしはそれで良いのです」

「そうか」
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