愛され庭師は悪役令嬢に巻き込まれ……いえ、今世こそ幸せにしてあげたいです!
 ディルはそれで納得したのか、静かに立ち上がった。
 そんな彼を、ローズマリーは観察するようにじっと見上げる。

「ディル様」

「何だ」

「要件はそれだけだったのですか?」

 淡い黄緑色をしたローズマリーの目が、見透かすみたいにディルを見ている。
 ディルは、目の前の少女が愛らしいだけの人形ではないのだと、今更ながらに理解した。
 友人であるソレルはかわいいと言ってデレデレしているが、神経を疑いたくなる。
 ローズマリーには逆らうなと、ディルの本能が警告していた。

「……いや、やはりこれも言っておこう。僕の見立てが正しければ、トゥルシー嬢には妖精魔法がかけられている。魅了か、服従か……もしくはそれに近いもの。それを解かない限り、彼女は花泥棒を諦めないだろう。このままだと、彼女を観察することができなくなる。だから僕は、彼女にかけられた魔法を解きたいと思っている」

「……」
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