愛され庭師は悪役令嬢に巻き込まれ……いえ、今世こそ幸せにしてあげたいです!
 だんまりを決め込むヴィアベルに、フィンスターニスは面白がっていることを隠しもしない。
 だが、嬉しいというのも嘘ではなかった。

 妖精は、あらゆるものから生まれてくる。
 一人きりで生まれ、消える時も一人きり。
 生まれてすぐの頃は似た属性の妖精が世話をするが、ひとり立ちすればまた一人きり。
 たまに群れることもあるが、ほとんどは一人きりだ。
 孤独など感じないし、それが気楽で良いと思っている。

 ただ稀に、そうではない妖精も存在する。
 それが、人の姿にもなれる妖精だ。

 人の姿にもなれる──それはつまり、人と交じり合いたいという証だ。
 具体的に言えば、抱きしめたり、キスをしたり、それ以上を求めたり。人が種の保存をするために行うことを、妖精の自分ともしてほしいと思った時、妖精は人の姿もとれるようになるのである。
< 195 / 322 >

この作品をシェア

pagetop