愛され庭師は悪役令嬢に巻き込まれ……いえ、今世こそ幸せにしてあげたいです!
 契約者は高齢である。
 あと数年もすれば寿命を終えることを、ヴィアベルは知っていた。
 最期まで見届けてから帰るつもりだったが、少し早めるのも悪くないかもしれない。

 そんなことを考えながら、ダラダラと帰国する日を決めかねていた時だった。

「ん、しょ……ん、しょ……」

 それは、誰もが寝静まった夜のこと。
 ヴィアベルが散歩から戻ってみると、キッチンから小さな音が聞こえてきた。

 はじめは、ネズミでもいるのかと思った。
 吊しているハーブを齧られてはたまらないと、ヴィアベルは渋々キッチンへ向かう。

「む?」

 近づいてみると、ハーブとチーズの香りが漂ってきて驚いた。
 鼻をくすぐる香りは懐かしさを覚えるほどで、もしやと期待しながらヴィアベルはキッチンをのぞく。
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