愛され庭師は悪役令嬢に巻き込まれ……いえ、今世こそ幸せにしてあげたいです!
「クッキーを、作ろうと思って……」

 自分が泣くから、祖父はクッキーを作れない。
 だから、自分でクッキーを作ろうとしていたらしい。

 ぽつりぽつりと話すペリウィンクルに、意外と勘が良い娘なのだなとヴィアベルは感心した。

(泣いてばかりのグズかと思っていたが……まぁ、器用でないのは確かだな)

 仕様がないやつだと嘆息し、ヴィアベルは小さな手でくるりと円を描いた。
 すると小さな風が起こり、ペリウィンクルの周りを駆け回って消える。

「わ、あ……!」

 黒い瞳が、星のように瞬く。
 いつだって下を向いて泣いたばかりいた女の子が、ヴィアベルのことをキラキラした目で見ていた。
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