愛され庭師は悪役令嬢に巻き込まれ……いえ、今世こそ幸せにしてあげたいです!

第31話 妖精と不幸な女の子②

「これくらいのことで対価を要求するほど、私は狭量ではない」

「きょう、りょう?」

「気にするなということだ」

 ヴィアベルがそっぽを向きながら言うと、ペリウィンクルは「ありがとう、妖精さん」と小さく笑った。
 子供とは思えないはかなげな笑みに、ヴィアベルの胸がきゅうっと締め付けられる。

 手で胸を押さえていると、ペリウィンクルが「あ!」と声を漏らした。
 思わず体をかたくするヴィアベルの前で、彼女はわたわたとミトンをつけてオーブンの扉に手を伸ばす。
 分厚い扉を開くと、熱気とともに香ばしいチーズとハーブの匂いがぶわりと漂い、キッチンを満たした。

 天パンを両手で持ち上げたペリウィンクルは、「んっしょ!」と台の上へ置く。
 焼き上がったクッキーを見て、彼女は落胆したようにため息を吐いた。

 納得がいっていない。と、そんな態度のペリウィンクルに、ヴィアベルもどれどれと近寄る。
 天パンの上には、お世辞にも綺麗とは言い難い歪な形のクッキーが並んでいた。
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