愛され庭師は悪役令嬢に巻き込まれ……いえ、今世こそ幸せにしてあげたいです!
(知らないことが怖いだなんて、大人でさえ言わないぞ……?)

 間違いではないが、子供の彼女が言っているということが、どうしようもなくつらくなった。
 ヴィアベルの胸は再び締め付けられるようにきゅうっとなり、同時に言いようもない不快感に襲われる。

「知らないことで、失敗したり、傷つけたりすることはままあることだろう」

「私が知らなかったから、パパやママは死んじゃったのよ」

「そんなわけがないだろう」

「だって、言われたもん。おじいちゃんとおばあちゃん、それからパパの婚約者だったっていう人に」

 泣いている方がまだマシだと、そう思う日がくるなんてヴィアベルは思いもしなかった。
 呟いたペリウィンクルの顔からは表情が抜け落ちていて、不気味なほど静かだ。
 ヴィアベルは彼女のことをオモチャのように思っていたが、こんな顔は嫌だと思った。
< 207 / 322 >

この作品をシェア

pagetop