愛され庭師は悪役令嬢に巻き込まれ……いえ、今世こそ幸せにしてあげたいです!
(人はこういう時、どうするものなのだ⁉︎)

 その時ふと、天啓かのようにヴィアベルの脳裏をある言葉がよぎった。
 フィンスターニスの言葉だ。

『その時がきたら、優しく抱きしめてあげるんだよ。人は壊れやすいからね。大事なら殊更優しくしないといけないよ』

 一度思い出してしまえば、もう駄目だった。
 頭の中はそれこそが正解だと言わんばかりで、フィンスターニスが言った「その時」がいつかなんて、考えている時間さえ無駄に思える。

 それこそ、ヴィアベルが番を【選んだ】瞬間だった。
 聞き及んでいた通りの現象が、自らの身に降り掛かる。

 はじめて手に入れた人の姿で、ヴィアベルはペリウィンクルへ手を伸ばした。
 ポカンと口を開けていた彼女は、何が起こったのかわからず呆然としたままだ。
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