愛され庭師は悪役令嬢に巻き込まれ……いえ、今世こそ幸せにしてあげたいです!
 探り探りゆるく抱きしめると、息を呑む音が聞こえてきた。
 それから、雨に濡れた子猫みたいに、腕の中に囲ったペリウィンクルが震えだす。

「大丈夫だ。痛くしない」

 できる限り優しく言ってみても、ペリウィンクルは怯えたままだ。
 宥めるように背中をさすっても、それは変わらない。

 人よりも長く生き、人よりも強い力を持ち、なにもかも人より優れているはずなのに、番を安心させることもできない。
 無力な自分に、ヴィアベルは腹が立った。

(いや、ここからだ。ここから、挽回していけば良い)

 ヴィアベルもペリウィンクルも、落ちるところまで落ちている。
 それならあとは、這い上がればいい。
< 209 / 322 >

この作品をシェア

pagetop