愛され庭師は悪役令嬢に巻き込まれ……いえ、今世こそ幸せにしてあげたいです!
「対価、対価と……あの頃からあいつは変わらないな。ああ、そうだ。いいことを思いついたぞ。次にあいつが対価と言い出したら、望み通り要求してやることにしよう」

 ヴィアベルとペリウィンクルの馴れ初めを聞かされるのは、もう何度目だろう。
 最早説明できるほどには覚えてしまっていると辟易したところで、フィンスターニスは「ああ、なるほど」と目を細める。

「なんだ」

 クツクツと笑うフィンスターニスに気付いたヴィアベルが、訝しげに彼を見る。
 ヴィアベルは、細められたフィンスターニスの目の奥が、いたずらっぽく光ったような気がした。
 こんな時の彼はろくなことを言わないことを、ヴィアベルは長い付き合いの中で嫌と言うほど知っている。
 身構えるヴィアベルの前で、フィンスターニスは「心外だなぁ」と肩を竦めた。

「ヴィーの番が、恋破れた乙女たちに手を差し伸べる理由さ。面倒なことをしているなぁと思っていたが……両親の影響を受けてのことだったのかと合点がいっただけだよ」

「まだ、引き摺っていると?」

「どうだろうねぇ。そこまでは。けれど、そうだね。彼女が大事にしているローズマリーがソレルとうまくいけば……多少の影響はあるのではないかい?」
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