愛され庭師は悪役令嬢に巻き込まれ……いえ、今世こそ幸せにしてあげたいです!
「こんなんじゃ、親離れなんて夢のまた夢になっちゃう」

 胸が早鐘を打つのは嫌な夢を見たからで、ヴィアベルの無防備な寝顔にドキドキしたからじゃない。

「ああ、もう。バカみたい。ちょっと、夜風にでも当たって落ち着いてこよう」

 ベッドからそろりと抜け出すと、部屋を出た。

 ***

 春の夜気は肌にやわらかい。
 水蒸気を含んでいるからだと教えてくれたのは、確か亡き祖父だったか。

 そんなことを思いながらペリウィンクルが外に立っていると、不意に空気が動いたような気がした。
 なんだろうと暗闇に目を凝らすと、白いものがスーッと歩いていくのが見える。
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