愛され庭師は悪役令嬢に巻き込まれ……いえ、今世こそ幸せにしてあげたいです!
 至近距離で、ヴィアベルと視線が絡む。
 頰が赤らんでいませんようにと祈りながら見つめていると、ヴィアベルが「そんな薄着でいるからだ」とつぶやいた。祈りの甲斐もなく、頰は赤らんでいたらしい。

「手を離しても叫ぶなよ?」

 わかったから、お願いだから、耳元でささやくのをやめてほしい。
 コクコクと必死になって頷けば、「いい子だ」と笑ってヴィアベルの手がゆっくり離れていった。

 手が離れていくのと同時に耳元から気配が遠のいていく。
 ペリウィンクルは助かったと安堵の息を吐き、脱力したようにその場へしゃがみ込んだ。
 そんな彼女と視線を合わせるようにしゃがみ込んだヴィアベルは、幽霊がいた方向へ視線を向けながら訝しげな表情を浮かべている。

「ヴィアベル? まさか本当に幽霊がいるとか……?」

 やわらかいと思っていた夜気が急に生あたたかく感じて、ペリウィンクルはすがるようにヴィアベルの服をギュッと握る。
 不安いっぱいの顔で力一杯服を握りしめてくる彼女を、ヴィアベルはチラリと見た。
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